コロナ禍の国内EC市場の現状と再注目の越境ECを解説!
※本記事は2020年に書かれたものです。
2020年1月~3月の国内EC市場はどう変化していた?
まずは、コロナ禍でEC市場がどのように変化したのかを見ていきましょう。
ECデータ分析サービスを提供する株式会社Nintの調査「新型コロナウイルスの影響によるEC市場動向調査レポート」によると、楽天市場、Amazon(マーケットプレイス含む / amazon.jpのみ対象)、Yahoo!ショッピング(2020年のデータはpaypayモールを含む)の3大モールの合計月次売上は、1~3月は昨年と比較して以下のように変動しています。
グラフの通り、2019年の1~3月と比較して、2020年はそれぞれの月がより大きな売上を出しています。また、株式会社Nintによると通常2月は1月と比較して売上が下がる傾向にあるそうですが、1月以降は右肩上がりで売上を伸ばしているのも特徴的です。
2020年に限っては、ウイルスの感染予防グッズや自宅で楽しめる娯楽用品などの需要が伸びたため、このような結果になっているだと予想できます。
現在は全国的に緊急事態宣言が解除され、徐々に街中が賑わいを取り戻しつつあるように思えます。
しかし、大手企業が在宅勤務への切り替えを行うなど、人々の生活スタイルが変化しているのも確かです。新型コロナウイルスが広がる前とは社会ががらりと変わってしまっている状況ですが、逆に言えば、今まで店舗で物を購入していた人がECサイトで知らなかった製品に接触してくる、絶好のチャンスでもあります。
実際に、クチコミプロモーションサービス「レビューブログ」が、女性会員1,072名を対象に実施したアンケート「コロナウイルスの影響によるSNS活用の変化」では、SNS利用機会の増加により今まで知らなかった商品を発見し、店舗で買っていたものをインターネットで買うようになった、という結果が出ています。
今後、新型コロナウイルス感染症には第2波も懸念されています。そんなものは来ないことが一番ですが、今後もECサイトは需要を維持し続け、また新しい顧客にアプローチする機会も多くなるのではないでしょうか。
見逃したくない越境ECの存在
さて、前述のように、国内でのECサイト市場はコロナ禍で拡大しています。ここに加えて注目していきたいのが、越境EC市場の存在感です。
こちらの図は、2019年に発表された経済産業省による越境EC市場規模の推計です。
越境ECは、日本国内ではそれほど盛り上がりを見せてはいません。しかし、アメリカと中国における「販売国としての日本」の占める割合は、非常に大きい数字を記録しています。これらの国ではかなりの流通量で、日本からの製品が購入されていのです。
越境ECの経験者割合も、日本がおよそ6%なのに対してアメリカは34%、中国は42%(2018年時点)です。つまり、アメリカと中国に住む人々にとって越境ECで商品を購入することはそれほど珍しいことでもなく、スタンダードになりつつあります。
今まで越境ECをやったことがなかったという日本の企業にとっては、元々買い手側の心理障壁が低く、またコロナ禍でより越境ECの必要性が増してきている今の状況は、越境ECを始める絶好の機会といえます。
越境ECの手法としては、現地のマーケット(中国の淘宝網やアメリカ版Amazonなど)に出品する方法や、自社のECサイトをグローバル化・新しく越境ECサイトを立ち上げるといった方法があります。人員リソースやマーケティング、予備知識によって適切な方法は様々なので、まずは同じ業界での越境EC事情を調べてみることから始めると良いかもしれません。
ECを最大活用して損失のフォローを
現在、日本国内での新型コロナウイルス感染症拡大は、4月、5月と比べて落ち着いているように見えます。しかし、まだまだ終息したとは言えません。株式会社医師のともが日本全国の医師1,346人を対象に行った調査では、「終息は2021年7月以降になる」と答えた医師が33.5%と最多でした。
終息の兆しとして「ワクチンが完成する」ことも挙げられていますが、こちらも早くて1年かかると言われています。一方で、何をもって終息とするのか、という定義も明確ではありませんので、すぐに終わると考える医師もいます。
このように、専門かであっても曖昧でばらけた見通しをしているので、私たちが正確に終息時期を推測するのは困難と言えるでしょう。前述したような第2波の可能性もあり、すぐにすべてが元通りになるとは到底言えない状況です。
また、2020年といえば、東京オリンピックの開催で大きく伸びると見込まれていたインバウンド市場ですが、こちらも大きく落ち込んでいます。
日本観光局(JNTO)によると、コロナ禍での訪日外客数は推計値で3月に19万4千人(前年同月比93%減)、4月に2千人(前年同月比99.9%減)、5月に3千人(前年同月比99.9%減)と、壊滅的な状況です。世界的に出入国規制が行われている以上いたし方ありませんが、衝撃的な数値だと言えるでしょう。
東京オリンピックを見据えてインバウンド客をターゲットとした商品展開をしてきた企業にとっては、絶望的な状況です。
ですが、このような状況下だからこそ、安全なところから欲しいものが手に入れられるEC市場への参入や海外の客層に向けた販売経路のグローバル化は、非常に有効な「コロナショックへの対抗手段」といえます。
先が見えない中でも、効果的な施策を取れるようにしていきたいですね。
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