ライブコマースを知ろう!EC領域の新たな販売形式を詳しく解説!
ライブコマースとは?
ライブコマースとは、ライブ配信とEC販売を組み合わせた新しい販売形式を指します。
ざっくり言うと「オンライン実演販売」です。中国をはじめとして、アジア各国やアメリカでは既に多くの企業が取り入れ、相応の成果を上げています。
日本でも、YouTubeをはじめとする動画サイトでは多くの人気配信者が存在し、17LIVEやインスタライブといった生配信に特化したアプリ・サービスが多く登場しています。また、ファンを多く獲得しているインフルエンサーが、特定の商品を紹介する「企業案件」というものも存在し、宣伝手法の一つとして定着しています。
ですが、その多くは紹介のみにとどまっており、視聴者が実際に購入するには、動画説明などに貼ってあるURLから販売ページに行くか、自力で商品を探す必要があります。
その手間をなくし、動画内でQRコードなどを活用して視聴者がすぐに購入できるように進化させた販売形式が、ライブコマースです。
ライブコマースのメリット・デメリット
ライブコマースのメリットは、
- 誰でも配信できる
- リアルタイムで視聴者の疑問や要望に応えられる
- 効果測定がしやすい
といったことが挙げられます。
例えば、通常のECサイトでは写真や説明に載っている情報以上のものを得るには、店舗側に直接質問したり商品レビューを見たりするほかありません。
しかし、ライブコマースでは視聴者が「触り心地はどんな感じか」「金具の部分はどうなっているか」「こういう使い方をしたらどうなるか」といった質問をリアルタイムにコメントできるため、より商品のことを理解したうえで購入することができます。
店舗としても、視聴者の不安や疑問を解消できるため、購入後の不満や不信感を減らせます。まさに、Win-Winの結果を得られるわけです。また、配信自体に直接購入する窓口を設置できるので、どのくらい売れたのかを簡単に計測することができます。
しかし一方で、
- Webで集客する必要がある
- あとから動画での発言を取り消せない
- 編集ができない
といったデメリットも。
事前準備をするのはもちろんですが、生配信の経験者やすでに実績のある有名配信者にお願いすることで、集客や経験不足からなる失敗を防止する、というのも良くとられている手法です。
では、インフルエンサーに依頼して自社製品を紹介してもらえれば、ライブコマースは必ず成功するのでしょうか?
「リアルタイムでお支払い」成功ポイントは「共感」と「熱量」
ライブコマースでは、大前提として「コミュニケーション」が最重要です。特に、予め欲しいものを決めている視聴者ではなく、「買う気はなかったけど配信内容に心を動かされて欲しくなってしまった」、つまり衝動買いをする視聴者を獲得するには、「共感」のほかに「熱量」が重要になってくるのではないか、と筆者は考えます。視聴者が配信の内容に引き込まれることで生まれる「熱量」と、配信者自身の「熱量」です。
詳細な情報提示や商品の特徴はECサイトにも掲載できますが、視聴者の感情を揺さぶるには淡白すぎます。一方で、ライブコマースでは画面の向こうの視聴者とリアルタイムでコミュニケーションが取れます。どちらがより買い手の心情に影響を及ぼせるかは、火を見るよりも明らかです。
さて、あなたが配信をする側だとして、どんなものであれば視聴者をワクワクさせ、すごいと思わせるプレゼンを行えるでしょうか。好きなモノや愛着があるモノの方が、話したいことも「試してほしい」という思いも、ずっと沢山ありますよね。
これは、ライブコマースでも同じことです。
例えば、インフルエンサーだからという理由で商品を知らない配信者にお願いして、いざ配信してもらったらあまり効果が出なかった……という場合、インフルエンサーはその商品を本当は「いいものだ」と思ってなかったのかもしれません。あるいは、試す時間や「いいものだ」と思えるくらい商品を知る機会が足りなかったのかもしれません。いずれにしても、ライブコマースは失敗となってしまいます。
もちろん、高いプロ意識を持っている配信者も多くいますから、彼らに託すことは間違いではありませんが、たどたどしいことが悪いことではありません。ライブコマースが盛んに行われている中国では、「40代の堅物社員が、不慣れながらも一生懸命に商品の紹介を配信した結果、多くの人がそのひたむきさに胸を打たれて売り上げを伸ばした」という実例もあるくらいです。
有名人に頼んでプロの配信をしてもらうべきか、開発者が素人ながらも商品の魅力を熱く語るべきか。ライブコマースでは、そういった試行錯誤や戦略が非常に重要です。
実例をピックアップ!
ここからは、日本でのライブコマース実例をご紹介します。
Trip.com「Trip.com LIVE」
大手オンライン旅行会社Trip.comグループが2020年7月に実施したのは、ライブ配信限定の「先行販売ホテル」を販売するライブコマースです。厳選した26軒のホテルを、通常より最大82%割引して紹介。予約件数3,658件を獲得し、大きな成果を上げました。
MCには旅行YouTuberを起用し、サポートとしてマネージャー格の社員が登場。YouTuberが実際に宿泊した際の体験談を語る場面もあり、視聴者に生の感想を届けました。また、リアルタイムで参加している視聴者向けの特典として、テーマパークの招待券や無料宿泊券が当たる抽選コーナーも設けられるなど、ライブならではの楽しみも用意されていたようです。
実際の購入経路は、Trip.comのWebサイトおよびアプリの特設ページを用意し、限定的な窓口で購入件数や売り上げを測れるようになっていた模様です。
日本で企業がライブコマースを行う場合、最も配信の敷居が低く間口が広い選択肢として、YouTubeが真っ先に選ばれると思います。もっとライブコマースが盛んになってくると、ECサイト内やECサイトの派生アプリとして、ライブコマースのみが配信される場が出来上がっていくと予想されます。
クックパッド「先払い型ライブコマース」
株式会社クックパッドが運営する生鮮食品のECアプリ「クックパッドマート」では、「先払い型ライブコマース」というユニークな手法を取っています。
第1弾では「本まぐろ」を販売。視聴者は事前にまぐろを購入し、実際に視聴者の手元へ届くまぐろの解体ショーをYouTubeで配信する、というもの。
Trip.comとは異なり、ライブ配信される商品は既に買い手が決まっているため、「リアルタイムで視聴者と交流することで購入を促す」というライブコマースの機能とは、ややずれているようにも思えます。
ですが、食材には「美味しいものが良いもの」という、ほとんどの人が共感する普遍的な基準が存在しています。また、生モノも多いため、実際にライブ配信してから購入者の手元に届くまで、品質がそのまま維持されるとは限りません。
そういった食材ならではの課題に対して、クックパッドの場合は生配信のライブ感を「食材のストーリー付け」として活用しています。店頭に並んでいる商品やECサイトの掲載ページでは味わえない「食材が手元に届くまでの行程」を、楽しんでもらおうとしているのです。
まぐろの解体ショーを例に挙げると、「スーパーで売っているまぐろの切り身」ではなく「たった今目の前で解体されたまぐろの切り身」というストーリーがついていることで、商品に付加価値がつく、という考え方です。
この手法は、食品に限らず手作業で時間をかけて作られるものであれば、なんにでも応用ができそうですね。
おわりに
これからさらに活用する企業が増えていくであろうライブコマース。今後の発展に期待しつつ、実際に活用する方法も考えていきたいですね。